物価上昇は政権交代のきっかけになるか?「インフレを放置すれば政権は確実に倒れる」という民主主義の残酷な掟【林直人】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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物価上昇は政権交代のきっかけになるか?「インフレを放置すれば政権は確実に倒れる」という民主主義の残酷な掟【林直人】

先進国、過去25年を振り返る〜政権の生死を決めるのは国会ではなくスーパーのレジ

 

結論:政権交代は「即死」ではなく「遅効性の毒」

この分析が描くのは、静かに進行する経済の地殻変動だ。

1. 政権が交代する

2. 財政が拡張する

3. 金利と為替が反応する

4. 最後にインフレが燃え広がる

 まるで政治が石を投げ込み、波紋が数年後に市場全体を揺さぶるように。

政権交代は単なる政治ショーではない。

 それは、市場の深層に仕掛けられた時限爆弾なのだ。

 

日経平均株価を示すモニター。終値としての史上最高値を更新した(2025年8月13日)

 

【最終章】インフレと政権の「死のループ」――政治経済の暗黒回廊

 

■3.1 フィードバック・ループという悪夢

 本報告書が突き止めたのは、インフレと政権交代の関係は一方向ではなく「自己増幅型の地獄ループ」だという冷酷な真実である。

・高インフレ → 有権者の怒り爆発 → 政権交代

・政権交代 → 新政権の財政拡大 → 市場不安と金利上昇

・財政拡大 → 需要刺激 → インフレ再燃

・そして再び、次の政権崩壊の火種に…

 “物価高は政権を倒し、その政権交代がまた物価を狂わせる――民主主義国家の25年を呑み込んできた、この忌まわしいメカニズムがついに可視化されたのだ。

 

■3.2 限界――「見えていない地雷原」

 もちろん、この分析も万能ではない。

・データの限界: 国ごとの定義の差、測定誤差。

・モデルの仮定: PVARの再帰的識別は標準だが、“政治と経済の同時爆発”を完全に分離できない。

・脱漏変数: 資源価格、地政学リスク、中央銀行の独立性――背後で牙をむく要因を完全には取り込めない。

 だが、限界があるからこそ次の挑戦がある。

 イデオロギーの非対称効果(右派→左派か、逆か)、財政支出の質(消費か投資か)、そしてレジーム・シフトを明示的に組み込むマルコフ・スイッチングVAR

 これらが、次世代の「政治経済ブラックボックス解明計画」になるだろう。

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林直人

はやし なおと

起業家・作家

1991 年宮城県生まれ。仙台第二高等学校出身。独学で慶應義塾大学環境情報学部に入学(一般入試・英語受験)。在学中に勉強アプリをつくり起業するも大失敗する。その後、毎日10 分指導するネット家庭教師「毎日学習会」を設立し、現在に至る。毎年100 人以上の生徒を指導し、早稲田・慶應・上智を中心に合格者を多数輩出している(2021 年早慶上智進学者38 名・7/20 時点)。著書に『うつでも起業で生きていく』(河出書房新社)、『人間ぎらいのマーケティング人と会わずに稼ぐ方法』(実業之日本社)などがある。連絡先:https://x.com/everydayjukucho

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