物価上昇は政権交代のきっかけになるか?「インフレを放置すれば政権は確実に倒れる」という民主主義の残酷な掟【林直人】
先進国、過去25年を振り返る〜政権の生死を決めるのは国会ではなくスーパーのレジ
■結論:政権交代は「即死」ではなく「遅効性の毒」
この分析が描くのは、静かに進行する経済の地殻変動だ。
1. 政権が交代する
2. 財政が拡張する
3. 金利と為替が反応する
4. 最後にインフレが燃え広がる
まるで政治が石を投げ込み、波紋が数年後に市場全体を揺さぶるように。
政権交代は単なる政治ショーではない。
それは、市場の深層に仕掛けられた“時限爆弾”なのだ。

【最終章】インフレと政権の「死のループ」――政治経済の暗黒回廊
■3.1 フィードバック・ループという悪夢
本報告書が突き止めたのは、インフレと政権交代の関係は一方向ではなく「自己増幅型の地獄ループ」だという冷酷な真実である。
・高インフレ → 有権者の怒り爆発 → 政権交代
・政権交代 → 新政権の財政拡大 → 市場不安と金利上昇
・財政拡大 → 需要刺激 → インフレ再燃
・そして再び、次の政権崩壊の火種に…
“物価高は政権を倒し、その政権交代がまた物価を狂わせる”――民主主義国家の25年を呑み込んできた、この忌まわしいメカニズムがついに可視化されたのだ。
■3.2 限界――「見えていない地雷原」
もちろん、この分析も万能ではない。
・データの限界: 国ごとの定義の差、測定誤差。
・モデルの仮定: PVARの再帰的識別は標準だが、“政治と経済の同時爆発”を完全に分離できない。
・脱漏変数: 資源価格、地政学リスク、中央銀行の独立性――背後で牙をむく要因を完全には取り込めない。
だが、限界があるからこそ次の挑戦がある。
イデオロギーの非対称効果(右派→左派か、逆か)、財政支出の質(消費か投資か)、そしてレジーム・シフトを明示的に組み込むマルコフ・スイッチングVAR。
これらが、次世代の「政治経済ブラックボックス解明計画」になるだろう。